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2022-02-23

『共「食」の地球地図』と名づけました~今までは、人間生活から見た『地球・宇宙を視野に持つ「共食の概念」(または「共食の様式」)とその重層性

1960年代後半から私は、人間にとって共食・孤食とは?共食の心髄とは?の答え探しをするために、関連する概念図、特にここ10年ぐらいは「諸概念の関係性を示す俯瞰図」を描いてきました(参考資料1,2、3)。その一端を、昨年7月はじめに、本ブログ「つぶやき」に書いたら、多分野の方々から質問やコメントをいただき、多くを学び、討論する機会が多くなり、感謝しています。

コメントの1つは、複雑すぎる、用語が固すぎる、もっとわかりやすいタイトルにしないと実際の現場で活用できない、肝心な人々と共有しにくい、等でした。「わかりにくい」ということは、まさに表現しようとする「概念」の俯瞰図自体の吟味が不十分な証拠と考え、苦戦していました。

1週間前(2月13日、オンライン)、日本栄養改善学会東北支部総会特別講演で、自分にとっての最難題(小原仁学会長からの要請、「共食」と「SDGs」をどうとらえたらよいか?足立自身はどうとらえているか?)を引き受けたのでした。

テーマは、2つのキーワードを並べ、かつ東北支部会なので、生まれてから,ずーッとお世話になった感謝を込めて、思いのまま

『共「食」とSDGs ―両者の原風景は東北で育ちました』

しかし、参加者は栄養・食関連の現場実践から研究・教育・行政等に携わる多領域の専門家で、一部関連分野の学生も加わり、知識も関心も多様なこと、共食やSDGsのいずれについても「自分ごと」として深刻に悩んだことがない人も少なくない、という情報も入り、「共食の心髄」を検討するための基礎的な理解が中心になりました(図1)。ありがたいことに“わかりやすさ”にこだわったが故に、私にとって新しい“キーワード”を得たのです。

タイトルに書いた『共「食」の地球地図』です。

ここで共「食」と食に「」を付けたのは、多種多様な意味を持ち、使われてきた食を認識や実践の対象とし、これらのできるだけ多くを俯瞰的に見直そうとする視野・意味を強調したい。少なくても「食育基本法」の前文で解説する人間・食物・地域・社会・生活・文化・歴史等の側面や多様な他とのかかわりの総体を視野に持つ検討(参考資料4)であることを明記したいからです。

 

1.『共「食」の地球地図』の基本枠組み(図2

共食を構成する2つの要素を2次元で取りました。

縦軸は「食行動」や「地域の食の営み」を「共にする人びと・や組織等」を、今回話題の地球や宇宙がこれらを内包して一番大きなサイズになります。

横軸は共有する「食行動」や「地域の食の営み」の内容や様式。

両者が交差するエリアを楕円で描きました。エリアのサイズも内部構造も多様なので、自由に手軽に描けるように全円や角形でなく、楕円にしました。

色は、人間生活からの共食実践や研究の出発点だった「家族との共食」のエリアを赤に、幾層にも重なる地続きの地域を緑に、今回注目する、果てしなく広がる海や空を青色にしました。

重要なことは様々な組み合わせで楕円が左下から右上の方に重層的に重なり、ひろがってゆくこと。逆の言い方をすると、右上の大きなエリアが、より小さなエリアを内包しつつ、奥行きを充実させつつ、全部を包み込んでいること。だから、1食1食の食事が、「地球・宇宙の食の営み」につながっていることやそれらのことを示しています。

各楕円のエリアはサイズや重なりが固定しているのでなく、地域により人により課題により異なり異なった時限をつくりだしていく可能性を持っていることです。

この共「食」の地球地図は、いわば、“さまざまな共食の概念や様式を扱う地球サイズの白地図”だから、自由に書き込んで使うことができるでしょう。

例えば、

ⓐ共食の概念や共食の様式の現状と課題を知りたいときは、現実の行動・活動・営みをマッピングするとよい。

ⓑその中からより豊かな展開をしたい共食の概念や様式を選び出したいときは、できるだけ大きく俯瞰して、気に入ったことを取り出せばよい。

ⓒ問題点解決やよりよく進めるための計画づくりに活用できる、

ⓓ仲間や組織としての検討の過程で、自分自身の得意なこと・うまくやれないこと・チーム全体の中での、自分の役割を“具体的に”検討しやすい、目指しているゴールへの検討も具体的にできる(参考資料5)。

重要なことは目指すゴールが、共有する家族・仲間・地域の人々と共有できるゴールとしての適否の検討を続けることでしょう。

「目指す共食」のゴールはなにか? SDGsのような懐の広ーい、深-いゴールがいい!

少なくても「共食の回数を増やすこと」はゴールでなく、もっと多くの人と共有できる、納得できるゴール実現への有効な“手段”の一つという考え方もできるということです。

だから、SDGsのような、世界中一人残さずの人を包み込むような温かい、懐の広い、深いゴールが欲しいです。

私は、食生態学が目指す『一人残らずの人がそれぞれの「生活の質」と「環境の質」のよりよい、持続可能な共生をめざして、形成し、実現できること』をゴールとし、この実現への小さなゴールを何重にもつなげて、「今やること・やれそうなこと・小さくてもいいので、より大きなゴールにつながるハート型で描いてつなげている。具体的な魅力的なゴールの共有なしに、行動はできないから。

こうしてみると、SDGsの17のゴールも、5つのP(People人間、Planet地球、Prosperity豊かさ、Peace平和、Partnership連携・パートナーシップ)のゴール実現への入り口ととらえることができる。SDGsの大きな森の中に入るとそれぞれの入り口から入ってきたたくさんの人やアイデアが、絡み合って、「5つのP」の実現へ向けて検討することができると考えます。

〇共食のゴールをSDGsにするとき、共食のすべての様式が実践へつながりやすい。

逆に共食が、地球・宇宙を視野にする共食の役割を発揮しやすくなる?!

食事は地球上すべての人が毎日・複数回・多様な食物と関わる営みであることが特徴なので、行動変容の可能性や多様性が高くなるととらえることもできましょう。(参考資料6)。

 

2.今までフル活用してきた「地域における共食と食育と生きる力の形成」(図3)の行動・活動・営みを、「共食の地球地図」の枠組みにプロットしてみました(図4

図の目的が同じですから当たり前ですが、図3を少し右斜めに倒すと、左下から共食の概念や様式が重層的に重なり合って、ひろがってきたこと。そして、これから、「地球・宇宙の食の営み」エリアを含めた検討が必須であることを示しています。

☆上記の作業を通し、ⓓエリアの共食をめぐって、検討すべき点が明らかになりました。

これも、資料1、2をお読みいただき、別途討論をしたいと思います。

 

<参考文献>

  • 足立己幸.家族と“食を共にすること”共食の大切さ.親子のための食育読本.内閣府食育推進室.2010:13-21
  • 足立己幸.「3密回避」が優先する今だからこそ、「共食」が大事:従来の概念を総括した「共食の概念図」の提案.食生態学ー実践と研究2022:4-9(3月末日発刊予定)
  • 足立己幸他.人間生活から見た共「食」の心髄」(仮題、本年5月末発刊予定)
  • 足立己幸.フードシステムと「食」育.フードシステム研究.2007:14(1).1-3
  • 足立己幸.食生態学から「SDGs」「食品ロス」をどう見るか.食生態学―実践と研究2020:16-19