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2014-04-17

「ごはん食推進フォーラム」~世界に誇る、私たちの和食~パネルデスカッション発言内容

2014.2.26日
「ごはん食推進フォーラム」~世界に誇る、私たちの和食~
パネルデスカッション発言内容

和「食材」や和「料理」の特徴をうまくコーデネイトする和「食事」力を育てる:
「3・1・2弁当箱法」の提案

2月26日に、農水省主催の「ごはん食推進フォーラム」~世界に誇る、私たちの和食~が開催されました。会全体の主旨や内容は月刊エコノミストの紹介記事が簡潔で分かりやすいので、ここに添付します。
紹介文の中で、“足立発言に注目度が高かった”と書いていただいたためか、多くの方から何を話したのかと問い合わせが来ます。たいへんうれしく、感謝しております。
そこで、ここではパネリストとして説明をした(10分間)の内容について、当日使用したパワーポイントをもとに、要点を書かせていただきます。ユニセフ無形文化遺産で急に浮上してきた「和食」論や厚労省が検討をすすめている「健康な食事」論にも使っていただければ幸いです。

<“和「食事」力”という新語をタイトルにしました>(図1)
和食文化という語が歴史的な実績をふまえて今、国際的に再評価され、多くの議論や実践に使われていること、マスコミや専門家の学会等で和食論が大きく取り上げられていることは大変ありがたく、うれしいことです。しかし現実には、和「食材」や和「料理」または和「食具」や日本のハレの日の食事が取り上げられることが多いようです。これらはどれも大事なことですが、もっと日常生活に寄せて和食文化を考える必要があるように思います。この点からすると、和「食事」が積み残されて議論が進んでいるようです。

<「食」の営みの全反映としての「食事」の営み >(図2)
「食生態学」の創設期に第1案を作図し、その後進化しつつ研究や実践の下敷きに使用してきた、「人間・食物・地域の関わりとその循環図」の概念図の一つです。食事は食用生物を生産・加工した「食材」を、さまざまな場で「料理」にし、それらが食べる人びとのさまざまなニーズに合わせてコーデネイトされて、「食事」として営まれます。「食べる営み」の結果は人々の「食を営む力」を育て、「生きる力」を育て、これらは家族や仲間や地域の生きる力、ひいては地球全体の生きる力の形成に関わり、「次の食の営み」へ関わっていくという「食」の循環性を示しています。このすべての段階で、図の左側に示した食情報の受発信が「食」の循環にさまざまな影響を及ぼしてゆくことは言うまでもありません。
ここで注目したいことは、一食一食は、こうした「食」の循環の全反映(総括)であると同時に、次の循環の一部になるので、単に、個人的な問題だけではないということです。良い食事か否かについて、単に個人の好みや健康状態だけで決めるのでなく、地域の「食」の循環にとっての適否が検討されなければならないでしょう。
だから、“何をどれだけ、どのように食べるか”が個人としてだけでなく、地域全体として、国全体として、地球全体として問われる必要があると考えます。そして、いわゆる消費者側だけの問題でなく、生産・加工・流通側や、情報提供側(教育やマスメデアを含む)問題であるということです。

<何をどれだけ食べたらよいかの答えを求めて>(図3)
“何をどれだけ食べたらよいか” についてはさまざまな研究と実践が行われ、実績を上げてきました。しかし、“適量でバランスのとれた食事が必要なことをわかっているけれども実行できない”人が多い中、私は食生態学の仲間と共に、「料理選択型栄養・食教育の枠組み」の必要性を主張し、具体的には「主食・主菜・副菜料理を組み合わせる」指標を研究開発してきました。
これは既に、厚生省「健康づくりのための食生活指針」(1985年)、農林省「日本型食生活指針」(1990年)、文部省・厚生省・農林省合同「健康づくりのための食生活指針」(2000年)、厚労省・農水省「食事バランスガイド」(2005年)、内閣府「食育ガイド」(2012年)、厚労省「健康日本21(第2次)」(2013年)等の行動目標や評価指標に取り上げられ、全国活用されているので、本日参加の皆さまになじみ深いことと思います。

<実践性の高い和「食事」力を育てる簡単ツール
:ごはんしっかり「3・1・2弁当箱法」>(図4、5)
先に述べた「料理選択型栄養・食教育」の枠組みを基礎に研究開発してきた「3・1・2弁当箱法」について、和「食事」力形成との関係を示した図です。これは本日初公開の図です。
○「3・1・2弁当箱法」は、“1食に何をどれだけ食べたらよいか”について、だれもが理解し、自分のゴールを持ち、実行(つくる、食べる、伝えあう)しやすいように開発された、食事づくり(料理の組み合わせ)のものさしです(図5)。
○だれでもがマイペースで作ることができるように、「5つのルール」でキーポイントを示しています(図4の中央)。
○「5つのルール」をしっかり守って1食を作ると不思議なことに、めざしたエネルギー量で、主要な栄養素がバランスよく組み合わさった、おいしい1食、しかも食料自給率が高い、健康な1食が出来上がります(図の右下)。
ポイントは「5つのルール」を正しく守ること。NPO法人食生態学実践フォーラム認定の「食生態プロモーターズ」が学習支援をすると、3回の繰り返し学習で、しっかりやれるようになることも確かめられています。
○「3・1・2弁当箱法」を基礎にする食事・食事づくり法の目的は食べる人にとって適量で栄養・味・環境面からバランスの良い食事を準備し、食べることができるようになることです。加えて、“何をどれだけ食べたらよいか”を考え、準備し、食べる力や目測力を育てることです(図の左下)。(この点が、サプリメントでの栄養補給や、緊急時対応の弁当配布と異なります)自分にとって適量でバランスの良い1食について基本的な知識や態度とセンスと実行力を育てること(食べる人にとって適量でバランスの良い食事の目測力形成)です。
○“毎日、毎食弁当ばかり食べるわけにはいかない”といって、「3・1・2弁当箱法」プログラムを拒否する人が少なくありません。その心配はありません。はじめは体格や健康状態にあったサイズの弁当箱を使って、自分の1食の全体量を把握する必要がありますが、望ましい1食の目測力が形成されてしまえば、どんな食器でも料理は主食3・主菜1・副菜2の割合で組み合わせることができるようになれば、弁当箱は不要にあるはずです。
早く力をつけたい時には、弁当箱を使って作った1食を、いつも使っている食器に移してみる、またはこの逆をやってみることです。
○「3・1・2弁当箱法」開発で重視してきたこと(図の左側から全体)
私は多くの生活者のニーズをふまえ、「日本人の生活文化・知恵」を重視し、栄養学の研究成果を活用してきました。そのめざす方向は、“ひとり一人の健康・生活の質(QOL)と環境の質(QOE)のより良い共生ができる”地域社会づくりです。
前述の料理選択型栄養・食教育を提案する時から、私は日本の食文化の知恵として、本膳の献立法を取り上げてきました。ここではその代表的な献立法として”一汁三菜“と書きました。その意味には、”ごはんプラス一汁三菜“であること。菜の数をゆるやかにとらえ、時には一汁一菜(現実には実たくさんの汁を副菜料理扱いにする)も含んでいます。また、現代のライフスタイルの多様化の中で、汁を拡大解釈してお茶などの飲み物に置き換えることもよいとしています。“しっかりごはんの主食と主菜と副菜の組み合わせ”を“食事を構成するコアの料理”とする考え方です。現実の食生活に対応した“ゆるやかな一汁三菜”ということも出来ましょう。
○以上の視野・視点で地域の食を考える時に問われるのは、現実のフードシステムが実践性の高い和「食事」力を実現できる状態にあるか? 地域住民はそうした内容の食物へアクセスできる食環境になっているか?ということです。図の右上に書いた農場、市場、食料品店、食堂やレストラン、学校・職場・施設、家庭等で、和「食事」力を発揮し、形成できる状態にあるか?です。
そうでないなら、これから先どうしたらよいかを考えなければなりません。


<市販弁当の内容を「3・1・2弁当箱法」で簡単チェックしました>(図6)
スライドにしていませんが、現在の市販弁当の多くは、①全体サイズが大きすぎまたは、小さい。②主菜が多く、それに比して主食が少ない ③全体に圧倒的に副菜(野菜料理)が少ない。④副菜が多く見える場合でも生野菜が多い。①は過多エネルギー量、または著しく低エネルギー量。特に後者は全栄養素の含有量が異常に少ないことにつながります。②は全体のエネルギー量は確保されたとしても脂質からのエネルギー比率が高率、または全体にエネルギー量が多い。その割には他の栄養素がほとんど確保されていない。また、価格が高い弁当は上記②のタイプが多くなる傾向がみられます。④の場合は限られた種類の食材で、しかもふわっと盛られており、「3・1・2弁当箱法」のルール2“しっかりつめる”をクリヤーしておらず、副菜料理(野菜を主材料にした)の実量が少ない場合が多いです。

<「3・1・2弁当箱法」の食事法を活かして、和「食事」力形成に多側面から貢献したい>(図7)
会場の展示コーナーに、事務的な仕事中心のサラリーマン男性や、しっかり仕事をする若い女性にとって適量と考えられる700キロカロリーの1食(700ミリリットルの弁当箱使用)の1食の実物を展示してあります。この図はその1食について、栄養面。味の面、健康面、食行動面、環境面(食料自給率から見た)から、分析や調査をした結果、大方めざしたレベルの内容であったことを示しています。展示コーナーで、実際に手に取って、“自分に適した1食”を考えるきっかけにしていただけると幸いです。
(発言は時間切れで終わり、その後、他の発言者との討論が行われました)

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