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2024-08-06

「人間・食物・環境のかかわり」の循環性について、世代を超えて共有したい!: 日常生活につながる「概念図」と「絵本」の共創を求めて(2)

はじめに

前回の同テーマ(1)のつぶやき(以下、0603つぶやき)の続編について、公益社団法人日本栄養士会の機関誌「日本栄養士会雑誌」2024年6月号(第67巻第6号11-18p)掲載の拙著『海がある食環境の視野で「人間の営み」の食育を~「さかな丸ごと食育」を例に~』の全文(以下、J論文)をPDFで読むことができるようになっているので、続編(2)を書きます。

 

1.『「人間・食物・環境のかかわりの循環」概念図構築と「さかなまるまるムーブメント」(主教材としての「さかなまるまる絵本」)構築の共創をめざして―食生態学を基礎に』の全体像図1(以下、本図)

本図はJ論文の図1の基礎版にあたる。(別の表現をすれば、J論文の図1は本図の縮小版)

左半分は0603つぶやきの図と同じ「人間・食物・環境のかかわりの循環図」で、実践現場で生じる課題解決の回答探しの過程で作図した概念図を下から積み上げ式に並べた。(以下、シートA)。

0603つぶやきの図と異なる点は、左下に「人間・食物・環境のかかわり」の循環の実体があり、私たちはその一部をそれぞれの角度から見ているに過ぎないことの確認を付記した。

右半分は、シートAの全体や特定部分を課題に合わせて基礎に置きながら、作成・活用してきた実践プロジェクトの活動の一つ、「さかな丸ごと食育」研究プロジェクト構築のプロセスと、プロジェクト活動等の主教材として作成した教材(広義)2種を位置付けてある。

下部が2003年に開始した「さかな丸ごと食育」研究プロジェクトの研究成果を基礎に、実践活動につなげる「さかな丸ごと食育」探検プロジェクトの主教材「さかな丸ごと探検ノート」の内容の一部(以下、シートB)を示した。

上部が2018年に「探検ノートプロジェクト」の実績を踏まえて開始し、現在進行中の「さかな丸ごと食育」幼児研究プロジェクトの活動の一環で構築した「さかなまるまるムーブメント」の全体像。その主教材「さかなまるまる絵本」の表紙等を紹介した。(以下、シートC)。

 

2.「人間・食物・環境のかかわりの循環」概念図構築と「さかなまるまるムーブメント」(主教材としての「さかなまるまる絵本」)構築)の共創関係を双方向の矢印で示した

❶から⓯のマークを付けて、各シートの内部、シート間、これらの全体の関係を双方向の矢印で示した。(ただし、各数値は認識や行動等の順番を示すのでなく、全体像の中での位置確認の符号)

「さかなまるまるムーブメント」の主教材としての「まるまる みんな いただきます!~かわも うみも やまも さかなも~」(以下、「さかなまるまる絵本」)にプロジェクトメンバーがこめてきたことや期待することについては、絵本巻末に書いた「あとがき」(資料1)があるので、読んでいただきたい。本稿では、この中「多分野の専門家による研究プロジェクト」の項の記載内容について、「人間・食物・環境のかかわりの循環」の概念図とのかかわりを軸に書くことになる。

2003年に一般財団法人東京水産振興会の事業の一環として「さかな丸ごと食育」研究

プロジェクトが作られ、「人間・食物・環境のかかわりの循環」の概念図A5の「食物」の中、魚をシンボルとして位置づけた図A5cを基礎に検討を開始した。

この図は図A3や図A4を包み込み、図A2とその基礎としての図A1を土台にしている。また、ほぼ同時に進行した第二次食育推進基本計画の検討にあたって公表した図A6、さらにこれらの国際研究や国際協力活動のために作図(図A5b、図A5d)し、現地の課題解決のプログラム形成・実践・評価・人材養成等で活用し、その課程から得た多くの知見を包み込んだ図A5である。これらを検討した箇所に羅列することをせず、まとめて1本の双方向の矢印❺で示した。

研究成果をふまえた主教材「さかな丸ごと探検ノート」制作は❺に重ねるようにシートAの他の概念図も多種活用したイラストを描いている。図B1や(本図には掲載していないが)図A3の食事づくりのPDCAを教材ではシンプルに表現し、「さかなパワーを使ったおいしい食事づくり」のワーク掲載等である❽。

シートAの中、白地部分に矢印の先端を位置づけた矢印(❻、❾、⓯)は、シートAの概念図のほぼ全体に関わる場合を示している。

2018年に、開始した「さかな丸ごと食育」幼児研究プロジェクトは縦の双方向矢印❼で示す通り、図Aの多様な概念図を包括した❺に❻❼❽の実績を踏まえ、さらに、新視点での課題解決・展開のためにシートA全体から、新たな知見や方法論を取り込み❾、基礎研究成果を加え、<絵本『まるまる みんな いただきます!~かわも うみも やまも さかなも~』を共有してすすめる「さかなまるまるムーブメント」の循環とメディエーターのかかわり>(略称「さかなまるまるムーブメントの図」を公表した。(資料2 さかな丸ごと食育NL18号「リレーメッセージ」

メディエーターとは、「それぞれのゴール実現へ向け、それぞれの地域や人びとの特徴を発揮して「さかなまるまるムーブメント」を多様にすすめる”仲立ち“のひと」とし、⓫に示す手順を踏んで、自分発揮をする仲間として期待される。

資料2の後半の見出しに“各ムーブメントの報告は「さかな丸ごと食育」情報交流プールで共有・公表され、次の循環の一部になり、循環していく”と書いたことが、本図の“共創”に深くかかわる。

特徴の一つは完成された学術論文や報告書だけでなく、まさに「ムーブメント」のプロセスや課題を含める。表現法も文章だけでなく映像、絵、音楽や設計図等ムーブメントの課題に沿った提案につながるといいと話し合っている。このプールの内容は「さかなまるまるムーブメント」事務局のルールに沿って、メディエーターや関係者⓭、「さかな丸ごと食育」幼児研究プロジェクト・探検ノートプロジェクト・「さかな丸ごと食育」研究プロジェクトやその関係者⓮はもちろん、⓯の点線で示すような「人間・食物・環境のかかわりの循環」概念図構築の関係者、そして❶に書いた人間・食物・地域・地球の現実の営み、生活・社会・文化・これらの循環へと「ムーブメント」がつながっていく可能性があるように思う。

こうしてみると、幼児から高齢者まで、生活・文化や環境を超えてつながりやすい絵本、とりわけ全体俯瞰がしやすい特徴を持つ絵本だからこそ発揮できる“概念図と絵本の共創性”の視点で、再考したいと思う。