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2023-09-14

「共食と孤食―50年の食生態学研究から未来へ」を発刊しました

書き進めるごとに、見落としてきた課題の大切さ・深さ発見で、共食・孤食研究の出発点に戻っている気持ちです。87歳になった今、気づきの遅さを悔やんでいます。

8月30日発刊にあたり、お世話になった方々に次のあいさつ文を書きました。

早速に感想・質問・意見等をいただき、その内容が本書の課題・難題ずばりですので、順不同ですが、この内容をキーワードにしながら進めてみたいと思います。

まず、一部の方々にお出しした「報告とお礼文」を原文のまま書きます。

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お世話になっている皆様へ

『共食と孤食 50年の食生態学研究から未来へ』出版のご報告と御礼

 

例年を超える猛暑など、厳しく・複合してすすむ環境変化の中、それぞれに大変な日々をお過ごしのことと思います。

おかげ様で2006年女子栄養大学退職時からの宿題だった「『共食・孤食』の心髄について、食生態学を視座にする原論」を目指す1冊を書かせていただきました。心髄の解答を明記するまでに至らず、今まで国内外の多くの方々のご指導・ご協力・ご協働をいただきすすめてきた実践と研究の全体を総括し、これからの「心髄探し」と「多様に可能な『共食・孤食』様式の中から、自分たちの『生活・地域・地球』に合った様式を選び、育てる時代」づくりの案内図の提案に留まりました。執筆中に新たな・基本的な課題がたくさん出てきましたので、これらの課題や皆様からのご意見・ご指導をいただき、「補充・展開の1冊」が必要なようです。

書名は、この内容のまま『共食と孤食 50年の食生態学研究から未来へ』です。

出版元を、超難産だった「食生態学」研究室を生み育てる母体となった女子栄養大学、その出版部が担ってくださいました。

第1回の編集会議の日から4年が経ってしまいました。この間、新型コロナウイルスパンデミックと名付けられた全世界を包み込む環境変化が、世界中の各家庭・一人ひとりの生活・心身へ染み入りました。一人ひとりの生命に直接関わる課題の連鎖が今も続いています。このことは、今までの人間たちの生き方・科学や社会活動のあり方等について、「原点からの問い直し」の指示であり、私たちが発議し構築してきた「共食・孤食」観や様式、その基礎となる「食生態学」の理念や研究方法論のすべてについても、例外ではありません。

本書の執筆はまさにこの真っただ中で、(不謹慎な言い方ですが私にとっては)地球・宇宙を視野にもつ世界中の監視下での試行錯誤になりました。実践や研究の一つひとつの真意、環境変化への柔軟な適応力の有無等を正面からチェックされるような、得難い機会になりました。本書はこの難関をくぐり抜けるプロセスの記録とも言えます。

本書は、多くの先達のご指導・ご指南を基礎に、数えきれないほど多くの人々(「食事スケッチ」を描いてくれた子どもたちも含めて)の協力・協働による内容の積み重ねから生まれています。本来なら、これらの人々全員の名前を共著者として列記したい気持ちですが、現実には不可能です。さらにページ数の制限もあり、実名で紹介することができなかったことから、巻末の「参考文献・資料」に「食生態学」らしさを発揮しました。

学会誌等の投稿規定では採択されないで、切り捨てられてきた貴重な生データーや思考過程の記録等を取り上げています。例えば、少数事例の丁寧な観察記録。日常生活の実践で生まれた疑問から出発し、先達の理論や研究成果をふまえつつ、議論を重ねてもまとめえなかった仮説や論考等も列記しました。学会誌等の研究論文や大掛かりな調査報告書の下積みの現地調査や議論の記録も知ることができる「小さな宝物の倉庫」と呼びたいです。

未成熟な1冊ですが、ひとり残らずの人々の「生活の質」と、地球・宇宙を視野に持つ「環境の質」の持続可能な「共生」を目指しています。共食・孤食・人間らしい食・生き方・連携・ゴール検討等々の議論のたたき台にしていただければ幸いです。

冒頭に書いた「補充・展開の1冊」の準備の一つとして、この1年間小休止していたブログ「足立己幸のつぶやき」を再開し、「共食・孤食」の特設コーナーを作ります。活用いただき、年代や地域や専門分野の枠をはずした情報交流、まさに共「共食・孤食論」の拠り所の一つになりたいと願います。

皆様のそれぞれの健康を祈念いたします。本当にありがとうございました。

『共食と孤食』チラシ

栄養と料理『共食と孤食』の紹介