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2016-12-28

「栄養学」が科研費助成事業審査区分表小区分に明記されました!

悲しいことが続いた2016年でしたが、年末にありがたいプレゼントが届きました。

日本人研究者にとって経済面でも研究の内容評価面でも重要な文科省「科研費審査システム」でも、勇断で提案された「科研費審査システム改革2018」でも、「栄養学」は大区分、中区分、小区分のいずれにもとりあげられず、その内容を例示する「キーワード」に分解した形で表記されるに留まっていました。
本年5月21日締め切りで、「科研費審査システム2018」案のパブリックコメント提出が可能でした。栄養学研究(実践研究を含む)関係者がそれぞれの立場で、要望書を提出したのでした。私も微力ながら、常日頃の不満(ややゆがんだ学問論や研究行政の偏り)を文章化し、関係者への呼びかけをしたのでした。たとえば、研究者としても社会的実践者としても尊敬申し上げる故井形昭弘名古屋学芸大学学長(当時はお元気でした。8月12日に急逝されました)に次のようなお願い文を出ししたのでした。

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※クリックで拡大します。

井形先生は折り返し返信をくださり、「栄養学への社会的なニーズが高まり、様々な研究と実践が精力的に行われているのだから、理論的な裏打ちのある文章で、提出することが大事であること。大学や学会等多様な研究が展開される「栄養学」の全体像が十分に議論される必要があること」等を指南いただきました。そしてご自分で学内外への行動を起こしてくださったのでした。

栄養学について、多くの関係者の社会的な認知への要望と、研究・実践の実績が(「小区分」ではありますが)審査システムの中に位置づいたことは大変ありがたく、かつ研究の質向上への社会的な責任を再認識し、大きなプレゼントと喜んでいます。

「科研費助成事業区分表」の内容については、今回率先して要望書提出を全国的に進めた一人、女子栄養大学大学院研究科長で日本栄養改善学会理事長でもある武見ゆかり教授(食生態学)の手紙に明解に書かれているので、紹介します。

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足立先生
(前略)
昨日,科研費助成事業 審査区分表の決定について,文科省から発表がありました。
発表内容の一部を下記に示します。
今年は,細谷先生,井形先生という栄養学を中心的に或いは周辺から、牽引されていらした偉大な指導者を相次いで失うという,悲しいことがありました。
が,これらの先生方が,見守り,導いて下さったような気がします。

とはいえ,まだまだスタート地点です。
これからの本番の勝負ですので,食生態学研究室としても
一層気を引き締めて研究と実践に取り組んでいきたいと思います。
これからもご指導,よろしくお願い致します。

(以下,文科省の発表内容)
今年5月に,研費審査システム改革2018へのパブコメが行われました。
パブコメを受けて,日本学術振興会および文科省にて審議が行われてきましたが、
栄養学は、栄養関係の複数学会からの要望に近い形で,
大区分I,中区分59の小区分の1つとして,「栄養学および健康科学関連」となりました。
現在のキーワードレベルではなく,小区分に「栄養学」が明示されたことは,
大変喜ばしいことと思います。
詳細は、こちらをご覧ください。

○「栄養学」に関する部分の概要は以下の通りです。
案の段階で「キーワード」となっていたものは,「内容の例」として示されています。
大区分I
中区分59 スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
小区分(4つあり,そのうちの1つが「栄養学」関係です)
59010 リハビリテーション科学関連
59020 スポーツ科学関連
59030 体育および身体教育学関連
59040 栄養学および健康科学関連
内容の例:栄養生理学、栄養生化学、栄養教育、臨床栄養
機能性食品、生活習慣病、ヘルスプロモーション、老化、など

○栄養学に関連した「内容の例」は、他にもあります。
大区分F
中区分38 農芸化学およびその関連分野
小区分
38050 食品科学関連
内容の例:食品機能、食品化学、栄養化学、食品分析、食品工学、
食品衛生、機能性食品、栄養疫学、臨床栄養、など

大区分A
中区分8 社会学およびその関連分野
小区分
08030 家政学および生活科学関連
内容の例:生活文化、家庭経済、消費生活、ライフスタイル、衣文化、
食文化、
住文化、衣生活、食生活、住生活、生活科学一般、家政学一般
家政教育、など

以上のように、栄養学分野の各人の研究内容に合わせて、
区分の選択幅が広がったと、とらえてよいと思います。
これも、栄養学分野のこれまでの実績と、社会の課題解決(例えば、健康寿命の延伸など)への
栄養学に対する期待と考えます。
2016.12.23 武見ゆかり
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