「さかな・人間・環境の循環図」にのせた子どもたちパワーに乾杯!
「さかな・人間・環境の循環図」にのせた子どもたちパワーに乾杯!
:第31回子ども自身がリーダーになる食事づくりセミナー
「ハートを食事でプレゼント!Part8」の「さかな丸ごと探検」から
前ブログ(2014年8月28日)で紹介した第61回日本栄養改善学会学術総会シンポジウム「実践栄養学は面白い」シンポジストとしての発言の一部に、図1を紹介した。
30秒足らずの短い説明だったのに、終了後、参加していた愛知県栄養教諭グループが“すごい!子どもたちが興奮するプロセスを知りたい”と申し出てきた。
このグループは、地域性、学校の教育理念、発達段階や学習ニーズに対応し、各教科等の特徴を発揮する全学連携・協働のシステマチックな食育のすすめ方について「さかな丸ごと探検ノート」を活用した食育プログラム形成を実践的に研究し、日々の授業等で展開していること。
この一部を上記の学会でも発表し(上原正子ら:評価枠組みの検討をふまえた食育プログラム作成―「さかな丸ごと探検ノート」を教材として)あ、高い評価を受けたグループだ。
私のように、小学校現場で、日常的な実践に関わらない私にとっては、日常的に貴重なアドバイザーたちである。
学習成果の分析等をしていない段階だが、質問に応えて、可能なら本格的なプログラムへの導入法を討論することを願い、以下に概略を書きます。
子どもたちが知っている魚の名前を書いた付箋をびっしり張った「さかなと人間と環境の循環」の図は今年8月5-6日実施のNPO法人食生態学実践フォーラム主催・社福法人健友会・医療法人西部診療所共催の食事づくりセミナー(以下、食事づくりセミナー)の一部として実施された。
学習者は図2の公募ポスターを見て集まった子どもたちなので、学習環境も食環境もかなり異なる混成グループになった。
具体的には、小学1年生1名、2年生7名、3年生2名、4年生2名、6年生1名、中学1年生1名の14名。
うち男子は小学2年生の4名。
本セミナー参加経験者は今回が4回目1名、2回目3名、「さかな丸ごと食育」に関連する他のセミナーの参加者が2名。
生活している場所について海なし県の埼玉県から12名、東京都内の埋立・臨海地域から1名、海辺に近い神奈川県と千葉県から2名である。
残念なことに、セミナー参加前に学習に関連する基本情報を得ていない。
学習ニーズやレデイネスが多種多様なグループの全員が、それぞれに楽しく・興味深く・達成感を得るようなプログラムをどうするか?
食事づくりセミナー全体のコンセプトやねらいとの整合性も必要である。どうするか?
一方食事づくりセミナー全体はグループ学習ですすめるので、各グループに“お姉さん”(と子どもたちが呼ぶ)役を担う女子栄養大学田中久子教授ゼミの学生との学習支援計画の共有が必要であった。
当日朝に、5分間ミーテングでメモ(図3)を使って、子どもの主体的な学習を支援する基礎的な条件づくりへの協力を求めた。
(学習支援計画書案を想定される条件に合わせて、複数案作成したが、前記の理由から現実の条件を反映されているとは言えず、かつ、当日には支援内容の再編をしつつ進めることになるので、学生たちが混乱することを避けて、提示しなかった)
学習のねらい、方法、評価の概要:図3のとおり
学習の経過:
子どもたちに手渡した教材:「さかな丸ごと探検ノート」。
グループごとに配布した教具:色つき付箋(7.5×2.5㎝)100枚ぐらい(1人当たり30枚検討で、追加自由)
(1)今日の学習のねらいについて(約10分、足立の講話):
「さかな丸ごと探検ノート」(以下、探検ノート)の表紙やタイトル(図4)に込めた学習の目的や方法の特徴、その中の□部分に学習者としての自分自身の名前(ニックネームでも絵でもよい)を記入することで、“自分が主人公”で“探検”をすることの大切さと可能性。
今日は45分だけなので、探検ノート2-3ページの「さかなと人間と環境の循環図」を学び、自分たちの循環図を作って学ぶことについて
(2)学びの方法の提案(約5分、質問カードを使った問いかけ):
(3)図5をグループに1枚ずつ配布して、簡単に説明すると、全員が了解したようで、図5前段の作業が始まってしまう(図6)。
考えてから、おもむろに書き始めるタイプ、思いつくままにどんどん書くタイプ、どんどん上に山高にするタイプ、書いたカードを自分なりにグルーピングしているタイプ、等。
(私は思い出せない時のヒントに、パワーポイントで、学校給食で魚を主菜にした1食と探検ノート30-31ページ、A家の夏のある日の冷蔵庫内食材(魚やその加工品を含む)全部の写真と、関連する探検ノート20-21ぺージ、スーパーマーケットのさかなコーナー(ノート18-19ページ)他をパワーポイントで見ることができるように準備していた。
しかし、子どもたちが自発的にどんどん作業をすすめるので、パワーポイントでの説明は不要であった。
(4)グループ毎に全員のカードを集めて、予備の探検ノートの循環図に張り付ける。
狭すぎて貼れない、貼れない分をどうするのかと大騒ぎになる。
この時に同じ魚でも出会った場所が違う、切り身や料理など形態が違う、弁当の中に隠れて見えないけど入っている等、循環図の中でのさかなの多様な存在形態や機能に気が付いて整理する上級生もいた。
(5)白板に、循環図の大判(A1サイズのポスター)を貼り、クラス全員が書きだした“全魚集合”の循環図をつくる。
同じ名前のさかな、または名称が異なるが同じ種のさかなもあるが(それぞれの子どもとのかかわりが同じでないことから、別立てで数えて)218種類が張り付いた(冒頭の図1)。時間があればもっと書けたのに、紙が大きければ書いたのに…等苦情もあった。
(6)自分が知っている、取り上げた魚を例に、循環図の循環性を学ぶ(足立が問いかける形ですすめる)
出会った魚はどこから来たの?これからどこに、どうなるのでしょう?
私たちの食卓へ、体の中へ、そして生きる力に、次の食へ…(図7)
「人間・食・環境の循環」について一般論で、生産から食卓への方向で進む学びに対し、ここでは子ども自身が出会った場所を起点に、子ども興味・関心に対応して、海や川の方向にもどったり、逆に身体の中に進んだりして、“自分から出発した”循環図としてとらえられたのか、真剣に循環をたどる子が多くみられた。
「すごい。全部つながっている!」「あたりまえだよ。循環しているから」等の子ども同士の会話が交わされていた。
(7)ここまで、図3に示した学習のねらい①②までで、担当時間の45分が来てしまったので、さかながそれぞれのさかながパワーを充分に発揮できるように、そして無駄のない活用の仕方やおいしい食べ方を学びことを約束して、閉会した。
学習評価に代えて:
食事づくりセミナー全体の評価との関連で、検討しなければならない。
現時点では、上記の学習の経過に記述した積極的で集中度の高い学習態度や発言から、プロセス評価としては良好としてよいだろう。
また、2日間の食事づくりセミナー終了時に実施したセルフチェックシート(探検ノート40ページの一部活用)のうち、「さかなと人間と環境の循環図」に関する回答から、「楽しかった」の選択者は14名中11名、「もっと深く知りたい」は11名、「友だちや家族に伝えたい」は9名、これら3項目全部を選んだのは、8名であった。
同じくセルフチェックシートの感想を自由に書く欄にほとんどが、イワシの手開き実習を取り上げている中、「さかなとにんげんとかんきょうのじゅんかんずがすごかった。さかなの名前がたくさん知れてよかったです.とてもたのしかった」(小学2年生、女子。原文のまま)があり、胸が熱くなった。
冒頭に述べた地域性、学校の教育理念、発達段階や学習ニーズに対応し、各教科等の特徴を発揮する全学連携・協働のシステマチックな食育のすすめ方検討成果と重ねて、具体的なプログラム形成を試みたいと考えている。
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