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2010-11-01

“栄養・食からの国際協力”に新しいうねり?!

前回のブログで紹介した「食と健康」社会貢献フォーラムが昨日、開催されました。
大型台風が関東を横切ると警報され、「だれだ、雨男は? 雨女は?」と関係者が心配する中での開催でした。

うれしいことに、200人ほどの参加者にいつもとは少し違った熱気が感じられ、会場の室温が高かったように思います。
1、2年毎に一度開催される「栄養・食からの国際協力」の課題・成果・更なる課題の共有をするこのフォーラムは、国際協力をめぐる国内外の国連、NGOやNPO等の大ベテランたちと、栄養・食・保健・医療・農業などをバックグランドに専門力を国際的に活かしたいという挑戦者(既にフィールドを得て活動し、矛盾や悩みの解決法を求めている人、そのネットワークづくりや人材養成の方法を模索している人など)が参加者の大半を占めます。

今回は、バックグランドが法学、経済、経営、文化等の大学学部生や大学院生が、新しい“熱気”の発信源になっているようでした。
栄養・食・保健分野の若者でも、「外国で活動したいのではない。国際協力につながりたい。仲間になれるか?」というニーズも“熱気”の色合いを変えているようでした。

まず、国井修博士・国連児童基金(ユニセフ)ソマリア支援センター保健・栄養・水衛生部長の基調講演は、ショッキングな写真の紹介から始まりました。
バングラディシュの4歳の双生児。一人(男児)は健康に育ち、もう一人(女児)は栄養失調に犯されて体重が男児の半分ほどしかない。その2人の写真です。

栄養状態がヒトとして生きること、人間として生きること、家族の生きること、地域が活性化することに密接に関わるはずなのに、現実では逆になり“悲しい循環”を繰り返す中で、今世界中で、毎日2万人以上の人々が栄養不良で死んでいる現状とその課題、解決への活動や課題を構造的に示され、“栄養が単なる栄養問題だけでないこと”、その改善が可能なのに家族でも、地域でも、国でも、世界中でも後回しにされていることの重大さが提起されました。

そのあと、こうした栄養・食をめぐる問題解決について、企業の社会貢献側からと、地域での活動側からの事例報告が紹介され、それらをふまえて「持続可能な食・栄養の国際協力―人づくり・ネットワークづくり」のデスカッションに入りました。
(詳細は近いうちに、味の素株式会社社会貢献チーム等からホームページ等で公表される予定)

最後の5分の総括で、私は本フォーラムのプログラムコーデネター・座長として、「今日のフォーラムでたくさんの課題を共有できたと思いますが、持続可能なの視点から、特に次の3つの課題を宿題として持ち帰りませんか」と提案しました。

■有効な活動を持続するためには、協働する関係者(もちろん、住民たちを含む)が共有しやすい・わかりやすいゴールと、その評価指標が必要だ、その検討。
活動のゴールに乳児死亡率の低下や5歳未満児死亡率を上げることは、長期目標としてよいとしても、それをめざす中期、短期、現プログラムの具体的な目標設定と、それをずばり(直接的に)評価できる評価指標(数値目標にも使える)の必要性である。インド・アーシャの活動報告を例にすれば、はじめは学習会で食べ物をもらえるかとコップを持って集まってきた母親たちが、徐々に、コップでなく母子手帳を持って集まるようになる。
さらに成長曲線に自分の子どもの数値を入れて集まる、さらにそれを友人などに勧めていっしょに集まるようになる……という行動の質的な変化を目標化し、その段階を評価できる評価指標をつくり、その変化の実績を共有し、喜び合って、次の目標設定にすすむことが出来るような……である。
他方で、こうした当事者たちの行動のレベルの評価と、地域の死亡率レベルの評価との関係性を明らかにするとき、このプログラムは普遍性を発揮して、他のプロジェクトと共有できるようになるだろう。

■持続可能な活動は、住民のCapacity empowermentなしには進まないといわれる。
本日の活動報告では、ボランテア推進員養成が“ボランテア推進員養成という形をとることで高いインセンテブとなり、生活者または住民としての学習意欲や意識・態度・行動化へと効果的に進めることの可能性が示されたように思う。
栄養・食の改善はジェンダーの向上や生活力形成と表裏一体であることからも当然かもしれない。
一方で、特に女性については、家族のための食物の確保・分配等のやりくり(まさにマネージメント)が得意行動であることから、栄養・食からのジェンダーの向上が期待できる。という発想の転換を加えて、地域におけるボランチア推進員養成の多面・多様な役割を見直し、それを活かす養成プログラムの開発も必要であろう。

■本日のキーワードの一つ、企業の社会貢献との関係からみると、国際協力活動側が企業へ依頼・承諾・受身であることから脱皮することが大変難しいことを示した。
別の言い方をすれば、企業側が国際協力活動の困難な課題解決を“援助する”関係から脱しきれないように見受けられた点についての再考である。
とんでもない、支援・共助・協働のコンセプトで進めている、と関係者には叱られそうだが……。
“持続可能性”の視点から見ると、企業側と国際協力活動側は“対等・双方向・質の高い共生の関係”が望まれる。
そのためには、プロジェクトの企画から評価、とりわけアセスメントの段階から協働であることが必要であろう。
今までの企業への支援依頼型から脱皮して、国際協力活動が企業CSRと共生型で展開する場合に重要なことは両者それぞれの明確なコンセプトと“得意力”を出し合って、地域・住民にとって、より質の高いゴールや方法で進めることになろう。
この実現のためには、はじめにあげた“共有できるゴールとその評価指標”が必要になる。どうするか?

これらの課題は、若いエネルギーが加わって寄せてきたうねりの中で、国際協力の原点を見直すことを宿題にしてくれたようです。

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