toggle
2019-06-03

「SDGs」17ゴールのロゴカードを、自分(たち)の課題や活動に合わせて、 並べ替え、サイズや形を変えて「より大事にすること」を強調し、自由に活用するといい!

5月26日、NPO法人食生態学実践フォーラムの2019年総会研修会は、
“「食品ロス」「SDGs」と食生態学―食生態学を基礎に何をすべきか、何ができるか”
をテーマに基調講演・実践課題からの問題提起・討論を行いました。
大変熱っぽい研修会になりました。
この内容とその後の議論の詳細は、NPO機関誌「食生態学-実践と研究」13号で特集を組みますので、ご期待ください。

さて、終了直後から、私の指定発言の内容について感想や質問が入り、特に標記について知りたい・やってみたいと関連する質問が寄せられるので、ここに概要を書きます。

1.指定発言のテーマは“食生態学から「SDGs」「食品ロス」をどう見るか”で、図1の内容構成ですすめました。

冒頭で私は、国連サミットで「SDGs」が採択・公表されたときにすごくうれしくて、興奮したこと。
理由の一つ、2030アジェンダは、開発途上国だけでなく先進国自身が取り組む普遍的な課題であり、取り組みの過程で、誰一人として取り残さない・世界中一人残らずの人が共有できる基本的で包括的なこと。
もう一つはその取り組みにあたって、17のゴール・169のターゲットが提案されたことです。
大きな目標に向かって入口が17(169の入り方を含む)もあって、これらが多様に関係し合っているので、どの入口から入っても「持続可能な世界」を実現することに関わり、貢献できる期待と可能性を示したことです。
とすれば、一人ひとりがそれぞれ一番大事にしている課題について、得意なスキルやネットワークを使って主体的に参加することができる自由、でした。
しかも、「SDGs」のゴールとターゲットは、「統合され・不可分なこと」ですから、どれを入口にしても開発目標に統合されつつ届いていくことになります。
とすれば、今までの実績(失敗も含めて)をばねにして、やりたいこと、得意なことから自分にあった入口を決めて実行してよいのです!
今まで食生態学は、人間の食や生きる営みについて、全体俯瞰統合的に活動目標や評価の検討を心がけてきました。
が、所詮、自分が育ててきた限られた視野・視点の全体像の中での全体俯瞰に留まりがちなことを、どう脱皮できるかを悩んでいました。
「SDGs」は食生態学実践と研究が求めてきた方向と重なり、かつ全地球からの全体俯瞰の提案に見えました。
全地球を視野に、一人ひとりを大切にした「SDGs」の大きなマップを広げて、その中に食生態学実践や研究のプロセスや課題をプロットする。
逆に、食生態学の概念図等に「SDGs」の17のゴールをマッピングすると、国際社会で共有する視野・視点での評価や課題発見や特徴確認ができそうだ!
すぐ、国連広報センターが作成した17ゴールのロゴカードをコピーして、バラバラにして、自分発想で順番を変えてA4紙に並べ、スマホ写真で記録し、タイトルを付けて、眺めるという一人ゲームをして、興奮したのでした。

足立ブログへ0602-1
※クリックで拡大

2.「食生態学のめざすこと」の方向を「5つのP」で確認する

まず、「SDGs」の包括的なゴール・持続可能な国際開発のキーワードとして、多くの人と共有しやすいように教材等で使われている「5つのP」を指標に、「食生態学」のねらい、食生態学の視座で検討してきた「栄養・食教育」の定義、これらを基礎にすすめている「NPO法人食生態学実践フォーラム」の目的や活動のコンセプト(文章中のキーワード)を重ねてみました。
「5つのP」とは、People人間、Planet地球、Prosperity豊かさ・繁栄、Peace平和、Partnership連携と説明されています。
女子栄養大学に「食生態学」研究室設置が認められた1969年から現在まで、一部表現法の修正はありますが、「食生態学のめざすこと」と「5つのP」はしっかり重なっており(Prosperity とPeaceに重なるのが、“生活の質と環境の質のよりよい共生”)感慨深く、これからの実践と研究の方向に展望を得た感じです。
しかし、その視野について食生態学では中核に日本を置き、その背景にやや薄く他の諸国を置き、さらに背景に他の生物たちも含めた地球全体を描いているのです。
(自分ではそうでないと考えてきたつもりですが)現実には国ワイドに留まり、地球ワイドとは言えないことの警告を得た感じです(図2)。

足立ブログへ0602-2
※クリックで拡大

3.「人間・食物・地域の関わりの図」(「地域の食の営みの図」)(概念図)に
「SDGs」17ゴールをマッピングして、食生態学の役割や特徴を確認する

食生態学がめざしている具体的な内容について、「SDGs」の視野・視点で全体俯瞰を試みました。
図3は食生態学実践や研究で下敷きのように使っている「地域の食の営みの図」(概念図)に、該当する「SDGs」17のロゴカードを置き、関連の深さや重要度の大きさでカードのサイズや形を変えながら、マッピングした1例です。
ⓐ直接関わり、実践・研究の環を重ねながら、ネットワークや環境づくりをすすめていると自己評価するカードは「地域の食の営みの図」の中に、
ⓑ間接的だが関わっている、または個人的な活動はすすんでいるかシステム化して多くの人々と共有できる段階に至ってないと自己評価するカードは図の縁に、
ⓒ直接ではないが関わりの重要性を理解し、計画の視野に位置づけたいカードはそれぞれの後方に置いてみました。

○“「SDGs」のゴールとターゲットは、統合され・不可分なこと”を特徴とするので当たり前ですが、17のカードに該当する場所はたくさんあり、ロゴカードをあちこちに貼りたくなります。
今回はあえて1枚だけにしました。
食生態学が「大事にしていること」や「しなければならないこと」の濃淡を浮き彫りにしたいと思ったからです。

○食生態学をふまえた教育的アプローチは、食の営みに関わる全ての人が主体的に「食を営む力」の形成(他へ発信・交流する力の形成を含む)めざしてすすめられるので、長い長方形にしました。
パートナーシップは各所・各課題に沿った連携、それらを巻き込んだ、より包括的な課題取り組みのための連携等が重層的に必要になり、実践効果を高めてゆきますので、長方形のままでなく全体を包む半月形に描く方がよいと思いました。
が、本稿では際限がないのでロゴカードの変形版を取り入れていません。

○図3は完成図ではなく、検討のたたき台です。
取り組む課題、関係する人や組織の活動コンセプト等に合わせて、17のロゴカードを全部使わないで、選択的にマッピングする方法もよいと思います。

足立ブログへ0602-3
※クリックで拡大

4.<地域や環境にぴったり? わたしの地域の「食の循環図」でチェック!>に
「SDGs」17のロゴカードをマッピングし、これからの活動課題を話し合うたたき台に!

2011年の東日本大震災で町全体が壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町では、その年後半から、自分たち自身で健康づくり・生活づくりができる実力をつけたいという希望が出され、町の保健センターやヘルスメイトが中心になって“「からだ・心・くらし・地域や環境にぴったり合った食事づくり」共食会”で学習・実行・家族や友人へ発信を重ねてきました。
図4は、そのワークブックのサブノート「ぴったり度アップシート」の1ページ、
“「地域や環境にぴったり?わたしの地域の「食の循環図」でチェック!南三陸町の例”
を台紙にしています。
共食会プログラムメンバーは図の下部、大変化した食環境の下、一人ひとりの「からだ・心・くらしにぴったりの食事づくり」の学習と実践をすすめてきました。
地域の生活実験での発見も少なくなく、その一つは、南三陸の海で採れる魚を主菜料理にする食事の時には栄養面や味面で良好なことはもちろんのこと、さらに“おすそわけ”などの人間関係や生きがいの活性化につながっていることが明らかになりました。
一方、町全体として、総力を挙げての豊かな海資源を基盤にした地域開発・生産活動の復興が順調にすすんでいます。
しかし、現実の町民の生活ではスーパーでの購入が多くなり、地元産魚貝類へのアクセスはうまくいかず、悩んでいます。
今回、「SDGs」17ゴールのロゴカードのマッピングで、図の下部に赤点線で囲んだ住民の生活者パワーと、上部の緑点線で囲んだ地域開発・生産者パワーとの連携・パートナーシップの充実が必要なこと、一方「ぴったり食事」等の食や健康学習の機会づくりが偏っているので、乳幼児や学童期を含む若い世代や生産・流通に関わる人々への学習の機会づくりが充分でないことが心配になりました。
抽象的な言葉で“連携してほしい”と願い出るだけでなく、国際的に共有されている「SDGs」17ゴールのロゴカードマッピングを見ながら、地域の特徴を発揮したパートナーシップづくりや食学習の検討ができるように思います。
このときの大事なことは、今マッピングされたカードを固定的に扱うのでなく、ゆるやかに、いろいろの立場や観点からカードを自由に動かしながら話し合うことです。

足立ブログへ0602-4
※クリックで拡大

参考HP
持続可能な開発目標(SDGs)とは(外務省)
Sustainable Development Goals(国際連合広報センター)
持続可能な開発目標(SDGs)(ユニセフ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。