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2011-04-21

3月11日の東日本大震災は一人にひとり“原点に戻る”ことの緊急性を伝えています。 食生態学も、直撃的にそれを問われています

日頃の思いをそのまま、つぶやくようにと始めたこの小さなブログなのに、この1か月余は何も書けなかった。
厳しいほど書けなくなるのはなぜなのかも整理できないほど厳しい日々であった。

昨年、100歳8か月で旅立つた父が生まれ育ち、多くの方々にお世話になった、まさに“ふるさと”が南三陸町(合併前は志津川町)。
マグネチュード9.0の地震、最高水位が40メートルぐらいという大津波に町中が飲み込まれたので、身近な親族でいまだに行方がわからない人もいる。
すべての情報がかなり具体的に、リアルに迫ってくる。

私のふるさと仙台の親族、友人、研究仲間、お世話になった人々も言い尽くせない被害を受けた。
さらに人災といわれる福島原発事故とそれに起因する“計り知れない”危機が幾重にもかぶさって、いまだに進行中だ。
まさに“壊滅的”な被害を受けた地域はじわじわを広がり、戻ってこない……。

全国から、とりわけ若い世代の人々からの支援を受けて復旧・復興へと動いている中、外国人からの見舞が早かったことも驚きだ。
共同研究者のソウル大学牟寿美名誉教授からは航空便で電池と懐中電灯が送られてきた。
締め切りを過ぎた原稿が脱稿できずに悩んでいることを心配して、デスクに吊って長時間使用できる小型タイプを調達してくださったのだと。

生活や地域との関わりで、人間らしい食とは何か、それをどう持続的に実現するか、その実践をすすめつつ、理論構築を目指す「食生態学」にとって、今回の東日本大震災はズバリの課題、緊急性の高い課題なのに、具体的に動けていない。
立ち止まって考えているわけにはいかないことなのに……。

いま、私が積極的にやれることは、現地での支援活動を進める栄養・食関連の支援者たちの要請に対し、具体的な資料提供や人材紹介や現地に対応したコメントを積極的にさせていただくこと。
NPO法人食生態学実践フォーラムの機関誌に寄稿をした次のコラムに、課題への挑戦の一部を書きました(5月中旬発刊予定)。

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NPO法人食生態学実践フォーラム・ニュースレター25号より抜粋)

大地震、津波、福島原発事故、食事が食べられない、生きられない……という“厳しいマイナスの連鎖、複合的・重層的な循環”を人間らしい食を復権する“プラスの循環”へシフトしたい!
~多様な専門力と個性をどう発揮するか~

「人間・食物・地域の循環図」のすべての拠点が押し流されている現地

3月11日午後、あっという間の大地震・津波と、じわじわと広がり続く数えきれないほどの余震が、海から陸へ遡上し、漁場・農場、工場・流通機関、役所・病院・施設・学校、家々、人々などのすべてをさらっていく壊滅的な連鎖が起きました。
さらに、これらのすべてを加速する原発事故とその影響……今回の大震災の恐ろしさは、生活も生産もすべてを壊滅的に破壊する“連鎖性”、しかも“複合的・重層的な循環性”にあるといえましょう。食生態学実践フォーラムが人間らしい食とは? その実現策は? を考える基本的な枠組みである「人間・食物・地域(食環境)の循環図」のすべての拠点が壊滅するという事実です。今も、大小の余震が連発し、深刻さを増しながら、“マイナスの循環”を続けています。

私たちフォーラムとして即支援活動ができなかった無力さを詫びたい

毎日、テレビや新聞等は、「一番困っていることは水、食物、特に乳幼児や高齢者が食べられるものがない……」と繰り返し報じています。東北地方の本会員が、勤務先で被害対応に窮していることを知りながらも、フォーラムとしては即協力・支援ができないままで、大変申し分けなく、慙愧です。「世界中一人残らずの人々に、いかなる時も人権としての食の保証(安全で栄養的に望ましい食物へアクセスできる食の保証)の実現」を活動のコンセプトに掲げているフォーラムなのに……。

問われるのはマイナスの循環を位置づけた
「人間・食物・食環境の循環図」を共有すること

即支援活動ができなかった理由の一つは、循環図についてプラス面だけをみて、その裏側のマイナス面との関連でとらえてこなかったことだと反省しています。視野としては持ちつつも、循環図に位置づけていない、表現していない(表現するほど重視していない?)ことにあるように自戒します。豊かな自然の威力・エネルギーは(人間にとっては)マイナス面で保有されているエネルギーでもあると、とらえる必要があるでしょう。自然は恐ろしいのではなく、両面を持つのが“自然”だと思います。

今、フォーラムとして何ができるか、やらねばならないか?

多様な専門分野の人々からなる会員構成の特徴を活かして、それぞれが可能な活動を進めることが一番でしょう。他の組織の活動に加わって、自分の専門性や個性を存分に発揮することも重要と考えます。
○昨年の総会で「森は海の恋人」の基調講演をいただいた畠山重篤氏は、海も仲間も壊滅の渦でした。早速に支援活動が組織されました(森は海の恋人緊急支援の会tel:0774-33-2503)ので、経済支援や技術支援を申し出ました。
日本栄養士会ユニセフも具体的な活動を始めています。
○フォーラムがサポーター養成を全国展開する「さかな丸ごと食育」活動の基本教材である「さかな丸ごと探検ノート」(5月下旬発行、会員に配布予定)の「さかな・人間・環境の循環図」に「マイナスの循環」について加筆しました。
フォーラム会員が新しい食環境観を育てつつ、発信し、東日本大震災が大きな犠牲のもとで提起してくれたもう一歩踏み込んだ「人間・食物・食環境の循環図」を展開していくことを願います。

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